猫といねむり。

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FIV vaccine:Fel-O-Vax? FIV
2008/10/02 16:00

●フェロバックス?FIVってなに?

フェロバックス?FIVは猫免疫不全感染症の「持続感染の予防」をするためのワクチンです。FIVは Feline(猫) Immunodeficiency(免疫不全) Virus(ウイルス)の頭文字をとった略語です。2007年6月20日に輸入承認がなされ、2008年8月5日に日本国内での販売が開始されました。

↓ フェロバックス?FIV ↓
フェロバックスの箱

ねこのきもち」2008年8月号(ベネッセ)43頁より。

FIVワクチンは、アメリカ合衆国(2002年承認)とオーストラリアとニュージーランド(2004年承認)でFel-O-Vax? FIVという商品名で販売されています。これらのワクチンはdual-type(2つのサブタイプを混合させたもの)で、それぞれの国のFIVのウイルス事情に応じて組成の配合を調整しています。*1

↓ 後述Aの議事録より関連部分キャプチャー ↓

ワクチンの内容

http://www.maff.go.jp/nval/syonin_sinsa/gijiroku/H190306.pdfより。
農林水産省 動物用医薬品等部会(2007年3月9日開催)議事録10頁。


「北里大学はFIVの発見者で、フロリダ大学の山本と共同研究を行い、米国で分離されたサブタイプAのペタルマ株と、静岡県の猫から分離しましたサブタイプBの静岡株を混合して使用することにより、日本の国内で最も流行しておりますサブタイプBの株にも有効なワクチンができることを、今回明らかにしたということでございます。」(原文ママ。)

議事録記載の「静岡県の猫から分離しましたサブタイプBの静岡株」はサブタイプDの誤記載と考えられます。後掲「動薬検ニュース」No.279参照のこと。

 →☆参照:FIVウイルスの共同発見者でFIVワクチンの開発者(英文)
 ‥Janet Yamamoto, Professor of Pathobiology, College of Veterinary Medicine
  @UF VetMed Home
  ‥Feline Friend


製造はフォートダッジアニマルヘルス社(工場:アメリカ合衆国メイン州) 。北里研究所が輸入販売しています(薬事法第2条12項により、輸入販売も製造販売も一括して「製造販売」と表記されます)。


 ◆医薬品情報
  ・動物用医薬品データベース動物医薬品検査所
   ‥「商品名称」に「フェロバックス」を記入してGoを押します。
     検索結果に「フェロバックスFIV 」がでてきます。
     右端から2つめの「詳細表示」をクリックします。

     ※ 「 フェロバックスFIV FDAH」は承認申請のためのものです。
       こちらは日本国内では流通していません。*2


 ◆製造[輸入]販売元
  ・学校法人 北里研究所
   > 生物製剤研究所
   > コンパニオンアニマルラボラトリー(KICAL)
   > 新しいFIV感染症の検査を10月1日より開始します。
   ‥検査項目、必要な血液、費用、日数などの情報があります。


 ◆製造元
  ・フォートダッジアニマルヘルス社 Fort Dodge Animal Health
   > Products > Fel-O-Vax? FIV
   *日本法人はワイス株式会社 > 製品情報に記載なし。
   

 ◆販売元
   ・明治製菓株式会社
    ‥全製品一覧に掲載なし(2008-09-17現在)
   ・共立製薬株式会社
    ‥猫用ワクチンに掲載なし(同上)



●新薬「フェロバックスFIV」承認の審議経過 *3 

他国ですでに製造販売が許可されている薬でも、日本国内に輸入販売するには国の承認が必要です。承認にいたるまでの審議のなかで、製剤の有効性と安全性について科学的なデータに基づいた検討がなされています。


 ◎ 2006年(平成18年)1月10日
  北里研究所による承認申請書提出。

 @ 2007年(平成19年)2月7日 
  農林水産省 動物用生物学的製剤調査会
  ‥調査会の審議・議事録ともに非公開

 A 2007年3月6日
  農林水産省 動物用医薬品等部会
  ‥議事録[PDF]9〜16頁(2008-10-1公開)
   < 承認・審査情報 < 動物医薬品検査所

 B 2007年3月23日
  厚生労働省 薬事分科会
  ‥Aについて文書報告のみでFIVワクチンについて審議なし。
   議事録にも記載なし。[web魚拓](電話回答も同様)


@の非公開審議での結論は、Aの議事録によると、以下のようなものでした。

非公開審議の結論

農林水産省 動物用医薬品等部会(2007年3月9日開催)議事録15頁。
(タンジェリン色の下線は筆者による。)

「‥どういう試験設定をさせれば、このウイルスが病気で有効と判定できるのかというのは大分問題になりまして、恐らくそういうのを満たすような試験設定はできないんだろうという結論になりました。
 そのために、アメリカで使用実績があるということと、同居感染の場合に抑えているということの2点で、有効性があると判定してもよろしかろうと。そのために、これからの実際に応用した際の副反応であるとか、いろんな面の調査をしっかりしなさいよという条件をつけて、ここに上程してもよいだろうということにしました。」


Aでは上述の「同居感染の場合に抑えているということ」を証明する実験の結果が、以下のように報告されています。

↓ 関連部分のキャプチャー↓

自然感染率試験

農林水産省 動物用医薬品等部会(2007年3月9日開催)議事録12頁。


「・・国内で最も流行しているサブタイプBに対する効果を、野外の伝播様式と同様になるよう、接触感染試験により調べております。ワクチンを注射した猫と、しない猫を2年間にわたり、青森2株を感染させた猫と同居して飼育しております。その結果、概−221 ページをご覧下さい。表10.6.1 に示しますように、対照群では8頭中3頭が感染したのに対し、ワクチン群では1頭も感染しておりません。この成績から本ワクチンは、野外に応用した場合でも十分効果が期待できるのではないかと考えられております。」


Bの文書報告とは、同議事録にて「事務局‥平成19年1月24日の薬事分科会で決定していただきましたところにより、これまでの報告事項の一部は文書報告とさせていただくこととなりました。文書報告の資料は既に先生方に送付しておりますが、お手元に参考までに『文書報告一覧』を配付しております。御確認いただきたく存じます。」と記載あり。文章報告内のフェロバックス?FIVについて審議中に委員から意見がなかったため、議事録にフェロバックス?FIVに関する既述なし。(電話聞き取りおよび議事録確認済み。)


●承認後の輸入製剤

日本国内への輸入が承認された場合でも、輸入のたびごとに国が製剤の検査(検定)を行っています。

輸入製剤の検定を行っている動物医薬品検査所の資料からフェロバックス?FIVに関係するものを抜粋しました。

 ◆動薬検ニュース > 279号(2007年10月1日)
   ‥平成19年(2007年)6月20日。

↓ 動薬検ニュース No.279より抜粋 ↓
動薬検ニュースより

「特筆すべき使用上の注意」として「注射後3カ月〜2年の間ににまれに繊維肉腫等の肉腫が発生し、同一部位へ反復注射することにより、発生率が高まるとの報告があるので、ワクチン注射歴のある部位への注射はさけること。‥本剤注射後、注射部位に腫脹硬結が持続的に認められた場合や副反応が認められた場合は、速やかに獣医師の診察をうけること。」(10頁。強調は筆者による。)なお、執筆者の衛藤氏は2008年9月現在別の部署に異動済みです。


 ◆製剤基準・検定基準等
  ‥基準名等:猫免疫不全ウイルス感染症(アジュバント加)不活化ワクチン
        平成19年5月18日(告示第6693号)新規追加
   内 容 :平成20年8月5日現在では番号232に情報あり[html][PDF

↓ 関連部分の抜粋 ↓
審査基準等のwebキャプチャー


  ◆ 検定合格数量 > 平成20年8月[PDF]
   ‥「猫免疫不全ウイルス感染症(アジュバント加)不活化ワクチン
     平成20年度累計1件  32640 mL」

↓ 5頁(/6頁)に記載あり ↓
検定合格数(2008年)


●ワクチンを打つときの注意点はなに?

まず、100%完璧に効くワクチンはヒト用でもありません。ワクチン接種によるメリットとデメリットをよく考える必要があります。

 →☆参照:ワクチン関係
      @週刊V-Magazine過去ログ


つぎに、FIVウイルスは自己のRNAを感染猫のDNAのなかに入り込ませる特徴があります(レトロウイルス科レンチウイルス属)。一旦、FIVウイルスが体内に入ると除去することは不可能です。

 →☆詳細:基礎講座「FIV(猫エイズ)ウィルスについて」
      @杉並区獣医師会


そこで、FIVウイルスが体内に入る環境にある猫の体内にウイルスが入らないようにすること=FIVに持続感染させないことが、FIVワクチンによる予防ということになります。

とすると、FIV感染の危険のない猫に敢えて接種する必要はないということになります。*4 具体的には完全室内飼いで、かつ、FIVに感染した猫と「ウイルスが傷口から体内に入り込むような濃厚な接触」の機会がまったくない猫には、ワクチン接種は不要だということです。

もっとも、完全室内飼いであっても、地震等による被災時などの場合に猫が自宅外に脱走等してFIVウイルスに感染する可能性はないとは言えません。屋外での自然感染率はお住まいの環境によって異なりますので、ワクチン接種のメリットとデメリットを熟慮のうえ、ワクチン接種が必要か否か、かかりつけの獣医師とよくご相談になることが必要です。

 →☆参照:猫免疫不全ウイルス(FIV)不活化ワクチン
      (下のほうまでスクロール要)
      @アルファ動物病院(鳥取市湖山町東)


[注釈]

*1 北里研究所生物製剤研究所の学術担当のGさんに直接問い合わせて教えていただいた内容です。メモを取りながらお聞きしましたけれども、聞き逃したり、勘違いをしたりして不正確なところがあるかもしれません。これらは、ご多忙にもかかわらず貴重なお時間を割いてくださった学術担当のGさんに責任のあるものではありません。問い合わせた時期は2008年9月中旬です。本文後述の2007年3月6日議事録がいまだ公開されていませんでした。内容の間違いにお気づきになった場合は、できれば正確な情報とともにお知らせいただければ幸いです。こちらでも確認のうえ訂正をいたしたく思います。

*2 同上。平成19年3月9日の審議でも「フェロバックスFIV、それからフェロバックスFIV FDAHが共同申請ということで全く同じもの」とされています。農林水産省 動物用医薬品等部会平成19年3月9日議事録9頁[PDF]。

*3 議事録が公開される前にWWW検索しておりましたところ、一向にでてこなかった審議情報でしたので問い合わせをしました。農林水産省担当部署のHさんには、御多忙のところ何度もお電話をいただくなどお手数をおかけくださりましたことを御礼申し上げます。また承認申請等についての初歩的な質問にも、担当部署@動物医薬品検査所のSさんに快くご対応いただきました。有り難うございました!。

*4 *1と同じ。


[謝辞]

FIVに感染した猫ちゃん、FIVを発症した猫ちゃん、ワクチン接種および感染防御の実験に強制的に参加させられた猫ちゃんたち、治験に参加した猫ちゃんに、このエントリーを捧げます。FIVの研究が進み不治の病によって生じる苦しみがひとつでも減るようにと願ってやみません。


[追記](2014-01-12)New!

フェロバックス?FIVについて、「2012年7月現在の在庫限りで販売を打ち切る」との記事が下記のようにあります。在庫限りなので、かかりつけの獣医さんでの取り扱いについては、各動物病院等の在庫状況により異なりますので、それぞれでお尋ねしないと分からない状況と思われます。

2012年8月のコラム 「はしごを外す」の話
 @南大阪動物医療センター

★猫エイズウイルスワクチン製造終了のお知らせ★
 @江東区 ZEROどうぶつクリニック blog




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