猫といねむり。

: 猫と暮らす毎日の備忘録 :

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猫とステロイド

プレドニン錠の小分け


●はじめに

FIVを発症した猫さん、好酸球性肉芽腫の猫さん(2歳齢から治療開始、13歳頃には大学病院での通院治療ののち寛解携帯版])、難治性口内炎の猫さんと暮らしてきて、皮下・筋肉注射、内服投与、外用薬といった各種ステロイド剤を、約16年間、継続的に使ってきました。現在も、喘息と多発性関節炎の猫さんの治療で、多発性関節炎にプレドニゾロン錠やプレドニゾン錠、プレドニン錠(いずれも成分名プレドニゾロン)を経口投与、喘息にフルタイド50μエアーの吸引投与を継続しています。猫さんとその症状によって投与薬剤や投与方法、投与量は異なっており、一律ではありません。いずれの猫さんもステロイド剤による重大な副作用は顕著となっていません。*1 なお錠剤を投薬する時には胃荒れ防止のため療法食を利用しており胃薬の使用を軽減しています(詳細はこちら携帯版])。

 →☆参照:猫の喘息携帯版


●基本的なこと

ステロイド剤の投与は、低用量であれば炎症を抑えるため、高用量であれば免疫を抑制するために使われています。*2 そのため猫の場合でも、小さな炎症から免疫疾患までとステロイドの適応症は幅広くあります。

猫はステロイドの長期投与によく耐える個体が多い *3 ことでも知られています。人間や犬と異なった代謝機能を猫が兼ね備えていることとも関係があるようです。

適切なステロイド剤の投与がなされると、早ければ数時間後、遅くとも5~7日以内には炎症が治まります。適切な量に満たない場合には、数日経っても炎症を抑える効果は得られません。


●獣医療での幅広い利用

獣医師はさまざまな疾患の猫にステロイドを利用します(いずれも人間に使われている医師処方の医療用ステロイド剤をそのまま利用しています)。

しかし、ステロイドの投与時に患者さんに、ステロイド剤の特性、ステロイド剤を投与する理由、投与する薬の名前と投与量、寛解の可能性と予後、減薬コントロールの方法、副作用の予防・発見・治療について、充分な説明をする獣医師はそれほど多くありません。獣医師からの説明をすぐには理解できない患者さんへの準備を整えている獣医師はさらに少なくなります。

このことは獣医師に対する不信を与える大きなひとつの理由になっていると愚考します。ステロイド剤が幅広く使われている現状を考えると、説明不足によって生じる獣医療に対する不信感の広がりの重大さをご理解いただけると思います。

患者さん自身が充分な説明を受けたうえで納得して治療をすすめていれば、患者さん自身がステロイドの減薬コントロールをしっかりと管理する一助になります。是非は別として癌治療にステロイド剤を利用することも広く行われていることから、早期のうちに抗癌剤治療の選択も視野にいれることができるはずです。


●副作用は?

ステロイド剤投与によって副次的に生じる作用には一般的に、食欲増進利尿作用からくる尿量増加があります。食欲増進も度がすぎると肥満になります。継続的に高用量を投与していると利尿作用により慢性的な脱水症状になります(血液検査ではBUNや蛋白が高値となります)。長期的な投与の場合にはエコーで把握できる程度の脂肪肝になることが多いようです。そのほか毛根を休止させる作用から脱毛が生じることもあります。

重大な副作用には医原性の糖尿病があります。ただし長期の投与により必ず生じる副作用ではありません。また医原性の糖尿病を引き起こす薬剤はステロイドだけではない(後述、松木直章「犬と猫の内分泌疾患ハンドブック」10頁参照)ことにもご注意ください。糖尿病に併発するクッシング症候群の場合には身体の両側の体幹部、特徴的には背部から臀部にかけて左右対称の脱毛を生じます。

ステロイドの減薬コントロールがうまくいかなかった場合には、副腎機能低下が生じます。とりわけステロイドの投与を急激に中止した場合には副腎機能不全が起こりえます(必ず減薬コントロールを経たうえで休止しなければなりません)。

なお吸入薬の場合は投薬量が内服の場合よりもはるかに少ないためこれらの副作用をほとんど心配しなくて済むという利点があります(参照:吸入ステロイド薬の副作用宮川医院)。


●猫に使われるステロイドとは?

各薬剤の添附文書は医薬品医療機器総合機構の医療用医薬品添附情報検索ページをご利用ください。

◆内服薬の場合
プレドニンの箱


猫に内服薬として経口投与されることの多いステロイド剤はプレドニンプレドニゾロンなどの薬剤名で販売されているプレドニゾロン(成分名)です。プレドニゾロンは約24時間ですべて尿中に排出されます。そのため下記の図のように投与後から排出までゆるやかな弧を描くように作用が上下します。ステロイド剤の内服を1日置きにすること(=隔日投与)はステロイド剤が体内に残留しない時間ができますから副作用の心配がかなり軽減すると考えられています。

プレドニゾロンの作用イメージを他の薬剤と比較して図にしてみました

プレドニゾロンの作用イメージ

*図のなかに書かれている「デポ・メドロール」は注射薬(後述)です。5kgの猫さんにプレドニゾロン5mg1錠/日投与と同程度の内容を注射したことを想定しています。注射の投薬内容量が多くなればy軸の体内残留値は高くなりますのでご注意ください。


経口薬の商品名にはプレドニン、プレドニゾロン prednisolone のほかにプレドニゾン prednisone やプレロンプレドハンなどがあります[詳細おくすり110番]。

これらの薬剤は成分がまったく同一であるものの、猫それぞれの個体や状態によって効果が異なることはよく知られています。そこで、治療の際にある種類の薬剤(商品名A)でプレドニゾロンの効果が実感できない場合、他の種類(商品名BやC)に変更して効果を実感できるかどうかを確かめることが行われています。

お手持ちの薬に刻印されている包装コードから製薬会社と錠剤の画像を調べるにはhealthクリックが便利です。

プレドニゾロンの識別コード


薬剤の添付文書は1箱単位(100錠、500錠、1000錠入りなど錠剤によって単位はことなります)で処方されれば箱に在中しています。しかし動物病院で処方される場合は分包された状態で渡されることが多く添付文書をつけてくださる動物病院はあまりないかもしれません。そこで、添付文書を読むためには、薬剤を処方していただくときに動物病院でコピーをいただくか、該当錠剤の添付文書をWWW上から取り出すことが必要です。医療用医薬品の添付文書情報検索では「一般名・販売名」にプレドニゾロンを記入して検索を実行して該当錠剤を見つけることができます。添付文書を読むときには人間の場合についての記載であり猫さんにはそのままあてはまらないことが多いことにはご注意ください

プレドニン100錠

プレドニゾロンの箱200811


◆注射薬の場合

猫の皮下または筋肉注射する場合の期待される効果は、経口投与と異なって、一定の作用を比較的長期間及ぼすことです。注射後に副作用が生じた場合にはステロイド剤を体内から取り出すことは不可能なので、高容量[高用量]を投与する場合は特に安全性について説明をして患者さんの確認をとってから注射することが望ましいと思います。

よく使われているのは、デポ・メドロール(※プレドニゾロン5mg1錠とほぼ同じ)です。経口薬の投与が困難な場合でかつステロイド剤の投与を治療に必須とする場合にも広く利用されています。1回の注射により約2週間から数ヶ月効果が持続します(個体差あり)。同一内容の注射を繰り返すことにより反応が悪くなることも知られています。ただしこの場合でも内服に切り替えると好反応を得られる場合も少なくありません。

このほかデキサメサゾン(※プレドニゾロンの8倍)も使われることがあります(私は未経験です)。抗生剤注射液のクロロシンにもデキサメサゾンが配合されています。

動物用医薬品副作用等情報(動物用医薬品協同組合編集)による用法・容量・使用上の注意・副作用情報‥プレドニゾロン注射液デキサメトゾン注射液


◆外用薬の場合

外用薬としては、軟膏があり、猫の口腔内疾患にケナログ(主成分トリアムシノロンアセトニド)が使われています(※購入者の住所氏名を記入して薬局で購入可能です。主治医である獣医さんで相談してからのご使用をお願いします)。トリアムシノロンアセトニドを配合した抗生剤ビクタスS MTクリーム[犬猫用](成分名オルビフロキサシン)も利用されています。

吸入薬として、喘息の猫携帯版]にフルタイド50μエアーが使われています。

ちびとフルタイドエアー


※吸入ステロイド剤については猫と喘息の薬携帯版]にまとめを書いています。お薬110番@人間用もご参照ください。

フルタイドMDIを4回押し/日であれば摂取量は50μ×4=200μ/日となります( ※μg=10-6g ですので 50μg=0.000001g×50となります。単位の換算表(メートル法単位で使われる接頭辞を参照。内服に比べて摂取量がごくわずかであるとお分かりいただけると思います)。。5mg錠のステロイドを割って使う経口投与に比べて、わずかなステロイドで喘息をコントロールできる可能性があります(ステロイドの経口投与による副作用を心配する場合はとくに検討に値するでしょう)。

吸入ステロイドの半減期(=投薬効果がなくなる時期で投薬量には左右されない)は猫では8時間とされており喘息の程度によっては朝晩吸入することが推奨されています。 [出典:Dr. Philip Padrid, RN, DVM, "Feline Asthma, Treatment Guidelines for Using Inhaled Medication,Flovent™ (fluticasone propionate) and albuterol metered dose inhalers with the AeroKat™ Feline Aerosol Chamber",2004.PDF

[追記]2007/11/01:※小児へのフルタイド利用による急性副腎不全については右記を参照:フルタイドについて喘息FAQ < 喘息を克服するためのページ(喘息患者の会『わかば会』運営)[web魚拓


そのほか目薬(点眼・点鼻)として、フルメトロンフルオロメトロン(成分はいずれもフルオロメトロン)、サンテゾーン点眼液(※上述のように作用の強いデキサメトゾン)、オルガドロン点眼・点耳液(成分名リン酸デキサメタゾンナトリウム。眼科用コルチゾン剤。包装写真)が使われています。眼軟膏としてネオ・メドロールEE軟膏(成分名 日局メチルプレドニゾロン。抗生物質の日局硫酸フラジオマイシンも配合。)も使われています。点鼻薬としてフルナーゼ(成分名フルチカゾンプロピオン酸エステル)も使われています。


ネオメドロールEE


2010年8月2日に新発売された犬用の点眼液「ステロップⓇ」も猫に使われています。New!

ステロップ 


動物用抗炎症ステロイド点眼剤で、主成分はジフルプレドナート。ステロイドとしての強さは、6群分類でも、2番目に強い(Very Strong)に分類されています(参照:「主なステロイド外用薬の強さのランク一覧表」三牧薬局)。乳濁点眼液(エマルション)で、点眼したときに、ドロッとした状態で眼に入ります。添付文書はこちらからダウンロードできます。



●副作用への対策は?

◆投薬内容を把握する

まず何よりも大切なことは、自身の猫に投与されているステロイド剤の特性、ステロイド剤を投与する理由、投与する薬の名前と投与量を把握することです。

投薬されているものが何か分からなければ、転院先の獣医師も手探りでの治療と副作用対策から始めなければならず、猫さんの身体やご自身の気持ちにも負担が大きくなります。

投薬時に獣医師に「何を」「どれだけ」「なぜ」投薬するのかをお聞きすることが大切です。薬剤に慣れ親しんでいなければ意味をもって名付けられているはずの薬剤名も記憶に残り難いです。ご自身でメモに残しておくか、先生や受付の方に紙に書いていただくと間違いが減ります。

その際には、ステロイド剤を利用した場合、症状をいったん抑えるだけ(=対症療法)なのか? 疾患が寛解する可能性があるのか? 予後はどのようなものか? についても詳しくお聞きするとよいでしょう。寛解の可能性があればステロイド剤の減薬コントロールの期間(数週間から数ヶ月まで幅広い)と方法に見通しがつきます。寛解の可能性がなければ、症状をコントロールできる最低用量をさぐっていくという慎重な投薬コントロールが必要になります。

ステロイドの減薬コントロールや適量・最低用量の模索は猫さんの毎日の様子とその変化を観察することが必須です。猫さんを毎日見ていて小さな変化も見逃さない患者さん自身がしっかり行うことでより適切なものになります(※減薬コントロールは症状が落ち着いてからステロイドの投与量を徐々に条に減らす、投与間隔をあけていくという方法を慎重に行っていくものです。投与量が多い場合には半年から1年かかる場合もあります)。


◆副作用に対して心構えをする

薬剤には副作用がつきものです。しかしステロイド剤を利用した場合の副作用の予防・発見・治療について、充分な説明をする獣医師はそれほど多くないことは前述した通りです。

炎症を抑えるために低用量のステロイド剤の経口や注射による投与を予定している場合であれば、副作用を回避するための方法はいくつかあります。外用のステロイド剤を利用してステロイドの摂取量をさらに低用量に軽減することや、ステロイド剤以外の薬剤を利用すること、まったく化学薬品を使わずに治療を試みることも可能です。

しかし免疫疾患のために高用量のステロイド剤を利用している場合には、ステロイド剤に代替しうるもので猫に安全に利用できる薬剤は少なく*4、対応に苦慮します。

そこで、

・副作用を理解する
・副作用の前兆をできるだけ早期に発見する
・副作用を治療する
・疾患の治療も継続する

ことが重要になります。

副作用についての説明、副作用が生じた場合の副作用症状ともともとの疾患の治療方法について、できるだけ詳しく担当の先生からご説明を受けることが必須になります。 *5


◆自分でできる対策は?

このほか患者さん自身が積極的にとれる対策もあります。

まず副作用としてあらわれる症状についての知識を前もって得ておくことも大事です。なぜなら実際に病状に直面したときには慌ててしまって、なかなか文字が頭に入ってこない場合も往々にしてあるからです。

つぎに副作用の前兆をなるべく早期につかむことです。

一番簡単なのは体重管理です。糖尿病に罹患すると体重が激減します。このほかの疾患の場合(例:腎疾患、甲状腺機能亢進症)にも猫さんの体重は激減します。計器は人間用でも構いません(ベビースケールを利用すると10~20g単位での増減を把握できます)。

定期的に血液検査を受けておくとBUNや蛋白の上昇を把握できますので、脱水対策をすることも可能になります。猫の血圧を測ることも可能ではあるので設備のある動物病院に通われている場合には血圧測定の相談をすることも悪くないと思います。

またご自宅で猫さんの尿糖を定期的に計っておくとすみやかな対策をとることができます。興奮で血糖値が急上昇する猫の場合は、糖尿病の把握に尿糖検査が必須となりますので、有効な把握手段です。猫には稀であるものの「ほとんどはインスリン抵抗性の糖尿病を併発している」クッシング症候群の兆候を掴むためにも役立ちます(引用は後述、松木30頁)。

動物病院で尿検査を依頼することも安心材料になるでしょう(清潔な容器に尿をいれて動物病院に持ち込むことでも検査可能です。かかりつけの動物病院にて詳細をお聞きくださいませ)。

 →☆詳細:自宅で猫の尿検査携帯版up!


さらに可能であれば一日の飲水量を把握するとなおよいです。多頭では難しいのですが‥1猫さんのみと暮らしている場合には比較的容易にできます。飲料用の水を入れた器の重さを量ることによって可能です。最初に飲水用に用意している器に水をいれた状態で容器ごとの重さを量ります。24時間後に同じようにその器の重さを量り、差し引きして水の量を把握します。

これらの記録管理のために猫さんノートを作っておくことになります。記載面に余裕があれば、投与した薬剤と投与量・投与時間に加えて、食べたもの、すこし気になった猫さんや排泄物の様子、お天気なども書いておくと、後年になって思いもかけないところで役だったりします。慣れてしまうと面倒にもならなくなります(^_^)ので作成をオススメします。



●最後に

ステロイド剤を使うことになった場合、とくに最初のころは不安でいっぱいな気持ちになるかもしれません。ステロイドを使いながらも不安を抱えたままの方もいらっしゃるかもしれません。ステロイドを使いたくても様々な理由から使えない場合もでてくるかもしれません。

そんな時には、根拠のない不安はとりあえず横においてみてください(^^; 対症療法なのか、症状の原因となっている疾患に対する処方なのかを見極めることも大切です。そして体質に応じた薬剤の選択と最低容量[低用量]の慎重な見極めに尽力をしてくださる、信頼できる獣医さんのもとでの治療を納得して受けられることを祈っております。

猫さんの一生は人間に比べるととても短いです。

気を落とさず・めげずに・前進されることと、できるかぎり正確な情報を求めて、担当の獣医師や他の獣医師、他機関、文献などに積極的にあたられることで打開策を見つけることができると思います。この記事がほんの少しでも一助になれば幸いです。

末筆になりましたが‥うちの猫さんたちの治療にあたってくださった先生方、いまも治療にあたってくださっている先生方と動物病院のスタッフの方々に心より感謝申しあげます。とりわけ大学病院での通院治療中に貴重な時間を割いてどんな疑問に対しても一生懸命丁寧に分かりやすく教えてくださった先生方の存在をいまなお有り難く思っています。そしてこの拙文をお読みいただいた皆さんが猫さんの治療を納得してすすめていくことができるようにと祈念しております。


[参考になるページ]

副腎皮質ステロイド < 動物のくすり東京大学獣医薬理学教室
‥動物に使われてる人間薬について簡潔にまとめています。


内科疾患に対する免疫抑制剤の使い方[PDF]
@大野耕一助教授(東京大学農学部獣医内科学教室
‥2002年9月27日初出という少し古い情報ではあるもののなお参考になる部分が多くあります。猫の免疫疾患に対する治療はまだ充分には進んでいないからです。

※ファイルに対しての直接リンクはご遠慮願いたいという執筆者のご意向を尊重したく存じます。そのため、お手数ですが、googleで上記タイトル「内科疾患に対する免疫抑制剤の使い方」を検索していただき(一番上位にヒットします)PDF書類をダウンロードしてください。

※大野論文の最新内容は、大野耕一「免疫抑制剤の種類と作用機序」『J-VET』第20巻10号(通巻247号、2007-10)12-16頁をご参照ください。


Mking's Annex
松木直章准教授東京大学大学院獣医学専攻獣医臨床病理学教室
‥東大附属家畜病院の学生・研究生向けの「犬と猫の内分泌疾患ハンドブック」をdownloadできます(現在のバージョンは:2008.10.02 4.29版です)。同ハンドブックによると猫の医原性糖尿病は多く、ステロイド剤以外の薬剤でも生じ、継続的なインスリン治療が必要となっている(2008.4.29版10頁)、「グルココルチコイドや黄体ホルモン製剤(例:アレルギー治療)を投与すると、これらの薬物のインスリン抵抗性によって一過性高血糖が生じやすい。この状態が長期間持続すると、2 型糖尿病と同様に膵臓のインスリン分泌能が失われて糖尿病となる。医原性糖尿病はしばしば不可逆的であり、生涯にわたる糖尿病治療が必要となることも多い。ステロイド製剤だけでなく、さまざまな薬物が糖尿病をもたらす可能性が知られている。」(2008.10.2版10頁)

ステロイド剤を摂取したときに生じうる重大な副作用である猫の糖尿病についても詳しく書かれています(2008.10.2版・2008.4.29版ともに9~17頁)。

猫には稀であるものの「ほとんどはインスリン抵抗性の糖尿病を併発している」クッシング症候群(2008.10.2版31~32頁。2008.4.29版30~31頁)や、高齢猫に多いと言われる甲状腺機能亢進症(2008.10.2版42~45頁。2008.4.29版38~40頁)など内分泌疾患について関心のある方には得るところが多いと思います。

 →☆参照:甲状腺機能亢進症携帯版


[注釈]

*1 ステロイドの利用によって症状の寛解が得られた猫さん@好酸球性肉芽腫群 は寛解後4年生存しました。わずかなぶり返しには最低用量のステロイドを利用して良好なコントロールを得ていました(死去時17歳11ヶ月。約1年半、田七人参を経口投与により併用。なお田七人参は実際に受診した開業獣医師の処方です。漢方治療を積極的に看板に出してはおられませんでした)。


*2 疾患により微妙に異なるものの猫の場合の高用量とは概ね2-4mg/kg/日を意味します 。5kgの猫であれば、5mgのプレニドゾロン錠を1日2~4錠投与することになります。ただし上記投与量では免疫抑制の反応が悪い猫には4-8mg/kg/日を必要とするとされており、この場合は5mgのプレドニゾロン錠を1日4~8錠投与となります。大野耕一「内科疾患に対する免疫抑制剤の使い方」1,4-5頁参照。※大野論文の最新内容は、大野耕一「免疫抑制剤の種類と作用機序」『J-VET』第20巻10号(通巻247号、2007-10)12-16頁をご参照ください。 up!

[追記]2008-02-06:ヒトに投薬された場合のステロイドが炎症を抑える作用は「炎症を起こしている細胞の中に入り込んで、中にあるステロイド受容体と結合して」「炎症性サイトカイン遺伝子に到達し、その転写を抑え」ることで得られています。ステロイドは炎症を起こしている細胞だけに入りこむわけではなく「全身の他の健全な細胞の中にも入って、その細胞で働いている遺伝子の活性化状態をも変化させます。」そこで副作用が全身に及びうることになります。竹内勤膠原病・リウマチは治る』(文藝春秋、2005)183頁。井上哲文「治療の歴史 免疫抑制薬」(月刊治療学、1999年2月掲載)[web魚拓]も参照。


*3 大野、同上、1頁。


*4 猫の(多発性ではない)関節炎に、犬の場合と同様に、非ステロイド系の消炎剤(NSAIDs)の利用を検討される場合もあるようです。NSAIDsの代表的なものには犬猫用のケトフェン犬用のメタカムなどがあります。動物用医薬品メタカム0.5%注射液の対象動物として猫が追加されたのは平成18年のことで再審査期間が2年間です(詳細)。

なお猫へのNSAIDsの投与は短期の場合にのみ支持され、長期での安全性は確認されていないことにご注意ください(出典:私自身は孫引きしていますのでこの点にもご注意ください:■猫における非ステロイド抗炎症剤:概説 Nonsteroidal anti-inflammatory drugs in cats: a review Vet Anaesth Analg. April 2007;0(0):.B Duncan X Lascelles, Michael H Court, Elizabeth M Hardie, Sheilah A Robertson:情報元:週刊V-magazine第296号-2007年9月18日号)。

NSAIDsについてはNSAIDs(解熱鎮痛薬)不耐症・過敏症独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センターをご覧ください(人間用)。


*5 猫の多発性関節炎の治療にもプレドニゾロン/プレドニンが使われています。糖尿病の副作用が出たためにプレドニゾロン/プレドニンの利用ができなくなり対処方法としてシクロスポリンが使われることがあります。

 →☆詳細:猫にシクロスポリン携帯版New!


また猫の喘息治療において内服ステロイド剤でのコントロールが困難となった事例において吸入ステロイド剤(ベコタイド 50インヘラー)を使用した事例@日本があります。参照:「気管支鏡検査により猫喘息と診断し、ステロイド吸入療法で管理した1例」城下幸仁・松田岳人(相模が丘動物病院,2004)[web魚拓

[追記]2007/01/07:上記の猫さんは吸入治療の結果「ほとんど発作なく全身状態は著明に改善」後に吸入治療に猫さんが非協力的になったために他の治療方法を採用されています。参照:城下幸仁「猫の気管支喘息をどうコントロールするか:猫の気管支喘息と診断した3例」の症例2(スライドパネルディスカッション)@第28回動物臨床医学会年次大会(2006)[web魚拓


※はじめてこのblogにいらした方は[はじめに携帯版]をご覧ください。

[追記]

・2013-05-26 2010年8月発売の「動物用医薬品抗炎症ステロイド点眼剤「ステロップⓇ」」の画像と説明を追加しました。

・2008-11-24 2008年11月現在のプレドニゾロン(塩野義製薬)の箱画像を追加しました。従来となかみに変更はありません。

・2008-10-02  松木先生の「犬と猫の内分泌疾患ハンドブック」更新@2008-10-02にともない、本文および注釈の該当ページ数と内容を確認してupdateいたしました。
 
・2008-09-14 注釈*6の内容を「自宅で猫の尿検査携帯版」 に再構成しました(注釈6は削除)。

・2008-08-24 Generic drugs; 猫にシクロスポリン2注釈1の内容を本文中にも転記いたしました。

・2008-08-18 副作用に関する部分(本文中)に脱毛について加筆しました。

・2008-07-08 シクロスポリンに関する注釈部分を「猫にシクロスポリン」に移動しました。大野耕一「免疫抑制剤の種類と作用機序」『J-VET』第20巻10号(通巻247号、2007-10)12-16頁を追記しました。

・2008-07-01 注釈*5 のなかで言及した、山陽動物医療センターへのリンクを追加しました。

・2008-06-28 [参考になるページ]の松木准教授「犬と猫の内分泌疾患ハンドブック」の説明文に、猫には稀ではあるものの、「ほとんどはインスリン抵抗性の糖尿病を併発している」クッシング症候群(同ハンドブック、30頁)について触れました。それに伴って、本文の該当部分、尿検査の部分にも同様の補筆をしました。

・2008-06-23 ネオ・メドロールEE軟膏の画像を追加しました。

・2008-06-18 漢字表記を訂正いたしました(十分→充分, 容量→容量[用量])。「容量」表記は大野耕一「内科疾患に対する免疫抑制剤の使い方」にしたがったものです。薬の分量に関する表記は「用量」とのご指摘を受け、容量→容量[用量]と改めました。> ご指摘いただきましたTさん、有り難うございました! また、フルタイドの成分表示をプロピオン酸フルチカゾン→フルチカゾン プロピオン酸エステルに変更いたしました。>ご指摘いただきましたTさん、有り難うございました!

・2008-05-20 画像を楽天からFC2に移動しました(閲覧上の支障はありません)。また松木先生のPDF書類の最新版の日付をに更新(2008-04-29)しました。

・2008-04-24 注釈6にウロペーパーの説明と画像を追加しました。→自宅で猫の尿検査携帯版」 へ移動しました(2008-09-14)。

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| | 2008年10月04日(Sat)18:01 [EDIT]


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